「不動産買取の注意点|業者選びから契約まで徹底解説」

不動産買取による売却は、早期売却や手続きの簡略化など、多くのメリットがある一方で、適切な注意と知識が必要な取引方法です。
実際に、不当な値引き交渉や契約後のトラブルなど、様々な問題が報告されています。
本記事では、自社でも不動産買取を行い、また複数の買取業者との取引実績を持つ専門家が、業者選びのポイントから契約時の注意点まで、安全な取引のために必要な知識を体系的に解説していきます。
これから不動産買取による売却をお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
1. 不動産買取の基本とメリット・デメリット
不動産の売却方法には、一般的な仲介売却と不動産買取の2つの方法があります。
特に不動産買取は、近年テレビCMなどでも目にする機会が増え、注目を集めている売却方法です。
ここでは、不動産買取の基本的な仕組みと、選択する際の重要なポイントについて詳しく解説していきます。
1-1. 買取と仲介売却の違いとは
不動産買取と仲介売却は、売却のプロセスが大きく異なります。仲介売却は、不動産会社が売主と買主の間に入って取引を仲介する方法です。
一方、不動産買取は、買取業者が直接物件を購入し、その後、業者が再販売や賃貸を行います。
このため、買取の場合は買主を探す必要がなく、取引がスピーディーに進むという特徴があります。
また、仲介売却では、物件の価格は市場価格を基準に設定されますが、買取の場合は買取業者が提示する価格で取引が行われます。
買取価格は一般的に市場価格より低めに設定されますが、これは買取業者が物件の再販売までのリスクや費用を考慮するためです。
不動産買取では、物件の現状や立地に関わらず、買取業者が査定を行い、取引が可能かどうかを判断します。
老朽化した物件や、立地条件が悪い物件でも、買取できる可能性が比較的高いのが特徴です。
1-2. 不動産買取のメリット3つ
不動産買取の最大のメリットは、売却にかかる時間が短縮できることです。一般的な仲介売却では、買主が見つかるまでに数ヶ月から場合によっては1年以上かかることもありますが、買取であれば最短で1か月程度で売却が完了する可能性があります。
このスピード感は、住宅ローンの返済に困っている方や、相続した不動産を早急に現金化したい方にとって大きなメリットとなります。
次に、確実な売却が見込めるというメリットがあります。
仲介売却の場合、市場動向や物件の状態によっては買主が見つからないリスクがありますが、買取では業者との契約が成立すれば、確実に売却できます。特に築年数が古い物件や、修繕が必要な物件でも、現状のままで売却できる可能性が高いのが特徴です。
さらに、売却に関する手続きや、物件の広告、内見対応などの煩わしい作業を省略できます。
仲介売却では、複数の買主候補との交渉や内見対応が必要になりますが、買取の場合は買取業者との交渉のみで済むため、売主の負担が大幅に軽減されます。
1-3. 不動産買取のデメリット3つ
不動産買取の最も大きなデメリットは、売却価格が市場価格より低くなる傾向にあることです。
これは、買取業者が物件を再販売するまでの期間の金利負担や、リフォーム費用、売却費用などを見込んで価格を設定するためです。
一般的に、買取価格は市場価格の60〜70%程度になることが多く、この価格差は決して小さくありません。
次に、買取業者によって査定価格に大きな差が出る可能性があるというデメリットがあります。
買取価格は各業者の経営方針や、再販売の戦略によって異なるため、同じ物件でも業者によって数百万円の差が出ることも珍しくありません。
このため、適正な価格で売却するためには、複数の業者から査定を受けることが重要です。
最後に、悪質な業者によるトラブルのリスクがあります。
不動産買取市場の拡大に伴い、新規参入業者が増加していますが、中には契約後に買取価格を大幅に引き下げようとする業者や、不当な契約条件を付ける業者も存在します。
このようなトラブルを防ぐためには、業者の選定段階での慎重な確認が必要不可欠です。
2. 不動産買取業者の選び方と注意すべき3つのポイント
不動産買取においては、信頼できる業者を選ぶことが成功の鍵を握ります。
買取業者の選定を誤ると、不当な価格での取引を強いられたり、契約後のトラブルに発展したりするリスクがあります。
ここでは、適切な買取業者を選ぶための具体的なポイントと、注意すべき事項について詳しく解説していきます。
2-1. 優良な不動産買取業者の見分け方
優良な不動産買取業者を見分けるための第一のポイントは、宅地建物取引業免許の確認です。
この免許番号は必ず広告や会社案内に記載されているはずであり、国土交通省の「宅建業者検索システム」で免許の有効性を確認することができます。
免許取得後の経過年数も重要な判断材料となり、一般的に5年以上の実績がある業者は、ある程度の信頼性があると考えられます。
簡単な判別方法としては、静岡県知事(2)第14121号の()内の数字が2以上であれば5年に一度の更新を経ている証拠となります。
また、業者の財務状況や企業規模も重要な確認ポイントです。
買取取引では、業者の資金力が取引の確実性に直結します。
上場企業やその子会社、または資本金が1億円以上の企業であれば、安定した取引が期待できます。
会社の所在地が実在するオフィスであることや、実店舗を持っているかどうかも、業者の信頼性を判断する上で重要な要素となります。
さらに、対応する担当者の専門知識や説明の丁寧さも、業者選びの重要な基準です。
初回の問い合わせ時から、物件に関する具体的な質問や、売主の要望をしっかりとヒアリングする姿勢があるかどうかを確認しましょう。
一方的な営業トークに終始する業者や、売主の事情に耳を傾けない業者は避けるべきです。
2-2. 買取査定額の妥当性を確認する方法
買取査定額の妥当性を確認するためには、まず複数の業者から査定を受けることが重要です。
一般的に3社以上の査定を比較することで、適正な価格帯が見えてきます。
ただし、極端に高い査定額を提示する業者には注意が必要です。
後から値引き交渉を行う「おとり査定」の可能性があるためです。
査定額の根拠となる周辺相場も必ず確認しましょう。
不動産情報サイトで近隣の取引事例を調べたり、国土交通省が提供する「不動産取引価格情報検索サイト」で実際の取引価格を確認したりすることができます。
買取価格は一般的に市場価格の60〜70%程度になることを念頭に置き、提示された査定額が妥当かどうかを判断します。
また、査定時には必ず物件の現地調査を実施しているかどうかも重要なポイントです。
机上査定や電話での簡易査定のみで買取価格を提示する業者は避けるべきです。
現地での詳細な調査を行い、建物の状態や周辺環境を十分に確認した上で査定額を算出する業者を選びましょう。
2-3. 買取業者の実績・評判の確認方法
買取業者の実績や評判を確認する方法として、まずは取引実績数の確認が重要です。
買取実績をHPなので公開しているかといった点も重要です。
また、対象となる物件と同様の種類(マンション、一戸建て、土地など)の取引実績が豊富かどうかも確認しましょう。
インターネット上の口コミや評判も、業者選びの参考になります。
ただし、ステルスマーケティングも存在するため、複数の情報源を比較検討することが重要です。
特に、マイナスの評判については、その内容が具体的かどうかを確認し、信頼性を判断します。
加えて、業界団体への加盟状況も重要な判断材料となります。
不動産公正取引協議会連合会や不動産流通経営協会などの業界団体に加盟している業者は、一定の基準を満たしていると考えられます。
これらの団体では、会員業者に対して定期的な研修や監査を実施しており、コンプライアンス意識の高さを示す指標となります。
3. 不動産買取での失敗を防ぐための契約時の注意点
不動産買取における契約は、売主の権利と利益を守るための重要なステップです。
一度締結した契約を後から修正することは困難であり、契約内容の見落としが深刻なトラブルにつながる可能性があります。
ここでは、安全な取引を実現するために、契約時に注意すべきポイントについて詳しく解説していきます。
3-1. 契約前に必ず確認すべき書類と条件
契約前に、引渡し前に必要な修繕や清掃の範囲、残置物の処理方法について、具体的な取り決めがなされているか確認しましょう。
買取申込書や売買契約書の内容も、慎重に確認する必要があります。
特に、契約の解除条件や違約金の規定、手付金の取り扱いについては、細かい部分まで確認することが重要です。
不明な点がある場合は、その場で必ず質問し、理解を深めてから契約を進めましょう。
また、業者から提示される買取金額から控除される諸費用についても、明確な説明を求める必要があります。
仲介手数料、登記費用、固定資産税の精算金など、取引に付随する費用の負担割合を事前に確認し、最終的な手取り額を把握しておくことが重要です。
3-2. 買取価格の値引きを防ぐためのポイント
買取価格の不当な値引きを防ぐために、まず重要なのは、査定時に物件の状態を正確に伝えることです。
後から物件の瑕疵が発見されたという理由で、買取価格が大幅に引き下げられるケースがあります。
知っている範囲で物件の不具合や修繕履歴を事前に開示し、それらを踏まえた査定額であることを確認しておきましょう。
契約書には、買取価格の変更に関する条件を明確に記載してもらうことも重要です。
「現況有姿」での取引であることや、事前に開示した瑕疵については価格変更の対象としないことなど、具体的な条件を盛り込むことで、不当な値引き要求を防ぐことができます。
さらに、契約から決済までの期間はできるだけ短く設定することをお勧めします。
期間が長くなると、その間の市場変動を理由に値引きを要求されるリスクが高まります。
一般的には、契約から1ヶ月程度での決済が望ましいとされています。
3-3. 契約後のトラブルを防ぐための対策
契約後のトラブルを防ぐためには、すべての交渉内容や合意事項を書面で残すことが重要です。
口頭での約束は後から争いの種となる可能性があるため、些細な変更点でも必ず書面化し、双方で確認するようにしましょう。
また、決済日までのスケジュールを明確にし、必要な手続きや準備物について確認しておくことも重要です。
住宅ローンの完済手続き、各種解約手続き、引越しの段取りなど、売主側で対応が必要な事項については、十分な準備期間を確保できるよう計画を立てましょう。
さらに、引渡し時の立会い確認も重要なポイントです。
物件の状態、設備の動作確認、鍵の引渡しなど、細かい部分まで双方で確認し、問題がないことを確認書等の書面で残しておくことをお勧めします。
これにより、引渡し後のトラブルを未然に防ぐことができます。
4. まとめ
不動産買取は、スピーディーな売却や手続きの簡略化など、多くのメリットがある一方で、適切な注意と準備が必要な取引方法です。
物件を適正価格で、安全に売却するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
まず、不動産買取のメリットとデメリットを十分に理解し、自身の状況に適しているかどうかを判断することが大切です。
急ぎの売却が必要な場合や、現状のままでの売却を希望する場合は、不動産買取が有効な選択肢となりますが、少しでも高額での売却を目指す場合は、従来の仲介売却も検討する価値があります。
次に、信頼できる買取業者の選定が、成功の鍵を握ります。
宅建業免許の確認はもちろんのこと、企業の規模や実績、評判などを総合的に判断し、複数の業者から査定を受けることで、より良い取引条件を引き出すことができます。
特に査定額については、周辺相場との比較や、現地調査の実施有無など、具体的な根拠を確認することが重要です。
そして、契約時には細心の注意を払い、書類の内容を丁寧に確認することが欠かせません。
特に契約書の内容は、不明な点があれば必ず質問し、理解を深めてから契約を進めましょう。
また、買取価格の不当な値引きを防ぐため、物件の状態を事前に正確に開示し、契約条件を明確に定めることが重要です。
不動産買取は、適切に進めれば非常に便利な売却方法となります。
本記事で解説した注意点を参考に、慎重に準備を進めることで、スムーズな取引を実現することができるでしょう。
もし不安な点がある場合は、不動産の専門家に相談することをお勧めします。
不動産取引は一生に何度もある機会ではありません。
焦らず、慎重に進めることが、最終的には望ましい結果につながります。
よくある質問
Q1. 不動産買取は仲介売却と比べて、どのくらい売却期間が短縮できますか?
A1. 不動産買取では、通常の仲介売却と比べて大幅に売却期間を短縮することができます。
仲介売却では買主が見つかるまでに平均3〜6ヶ月程度、物件によっては1年以上かかるケースもありますが、不動産買取の場合は最短で1か月程度での売却が可能です。
Q2. 買取価格が契約前の査定額から大幅に下がることはありますか?
A2. 適切な業者を選択し、物件の状態を事前に正確に開示していれば、契約前の査定額から大幅な値下げを要求されるリスクは低くなります。
ただし、契約前に開示されていない重大な瑕疵が見つかった場合や、契約から決済までの期間が長い場合には、価格の見直しを求められる可能性があります。
これを防ぐためには、①物件の状態を正確に開示する、②契約から決済までの期間を短く設定する、③価格変更の条件を契約書に明記する、といった対策が有効です。
Q3. 買取業者の選定で、具体的に何社くらいから査定を受けるべきですか?
A3. 適正な買取価格を把握し、信頼できる業者を選定するためには、3社以上の買取業者から査定を受けることをお勧めします。
多すぎも良くないので最大で5社程度から査定を受けることで、より正確な相場観をつかむことができます。
ただし、単に査定件数を増やすのではなく、事前に各業者の実績や評判を確認し、信頼できる業者を選んで査定を依頼することが重要です。
また、極端に高額な査定額を提示する業者には注意が必要で、このような場合は追加で他社の査定を受けることをお勧めします。

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